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共働き夫婦が取り組むセルフ年金構築戦略:公的年金に頼らない資産形成とリアルな計画立案

Tags: セルフ年金, 老後資金, 資産形成, 共働き, 投資戦略

はじめに:共働き夫婦にとってセルフ年金が必要な理由

現在の日本の公的年金制度は、少子高齢化の進行により、将来受給できる年金額が減少する可能性が指摘されています。特に、現在の40代後半の方々にとって、将来の生活を公的年金のみに依存することは、多くの不安を伴うかもしれません。共働き世帯の場合、夫婦それぞれが厚生年金に加入しているケースが多く、単身者や片働き世帯と比較して有利な面もありますが、それでも自分たちの望む豊かな老後生活を送るためには、自助努力による資産形成、すなわち「セルフ年金」の構築が不可欠であると考えられます。

共働き夫婦がセルフ年金構築に取り組む意義は、単に不足する年金額を補填することだけにとどまりません。夫婦で共通の老後資金目標を設定し、それぞれのキャリアや収入状況に応じた役割分担をしながら計画的に資産を形成していくプロセスは、将来に対する安心感を高め、夫婦の絆を深めることにも繋がります。本稿では、共働き夫婦がセルフ年金を構築するための具体的な戦略と、リアルな計画立案のステップについて考察します。

ステップ1:夫婦それぞれの公的年金見込み額の把握と老後資金目標の設定

セルフ年金構築の最初のステップは、夫婦それぞれが将来受け取れる公的年金の見込み額を把握することです。日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」や、マイナポータルを通じて確認できる「わたしの年金」を利用することで、これまでの加入実績に基づいた年金見込み額を確認できます。これにより、公的年金でどの程度の生活費が賄えるのか、具体的なイメージを持つことが可能になります。

次に、夫婦で話し合い、理想とする老後生活を送るために必要な年間支出、そして総額としての老後資金目標を設定します。この際、現在の生活費を参考にしつつ、趣味や旅行、医療費なども含めて具体的に洗い出すことが重要です。例えば、総務省の家計調査報告(家計収支編)などを参考に、現在の同年代の平均的な支出や、高齢夫婦世帯の平均的な支出をベンチマークとすることも有効です。

設定した老後資金目標総額から、夫婦それぞれの公的年金受給見込み総額(平均寿命などを考慮したおおよその生涯受給額)を差し引いた金額が、セルフ年金として準備すべき目標金額となります。

ステップ2:夫婦の収入状況に応じた積立計画の策定

目標金額が定まったら、次にその金額を達成するための具体的な積立計画を立てます。共働き夫婦の場合、夫婦間で収入に差があることも多く、どちらがどのくらいの金額を、どのような方法で積み立てるかについて、現実的な役割分担を決めることが有効です。

積立方法としては、非課税制度であるiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(あるいは新しいNISAのつみたて投資枠・成長投資枠)、そして特定口座での積立などが考えられます。

夫婦それぞれの収入額、所得税・住民税率、勤めている会社の企業年金制度などを考慮し、iDeCoとNISAの非課税枠を優先的に活用しつつ、不足分を特定口座で補うといった複合的な積立計画を策定します。例えば、夫の収入が高く企業型DCがある場合は夫のiDeCoの上限が低くなるため、妻がiDeCoで上限まで積み立て、夫はNISAや特定口座を重点的に活用するといった戦略が考えられます。

ステップ3:リスク許容度と目標期間に応じたポートフォリオ構築

積立計画と並行して、どのような金融商品に投資するかのポートフォリオを構築します。セルフ年金は通常、数十年にわたる長期的な目標であるため、リスクを抑えつつ着実に資産を増やすための分散投資が基本となります。

共働き夫婦の場合、夫婦それぞれのリスクに対する考え方や許容度に違いがあることも珍しくありません。しかし、老後資金という共通の目標に向けた資産形成においては、夫婦合算での全体最適なポートフォリオを考えることが重要です。夫婦それぞれの資産(iDeCo口座、NISA口座、特定口座など)を合計した全体像で、リスクとリターンのバランスを評価します。

具体的なポートフォリオ構築にあたっては、以下のような要素を考慮します。

夫婦それぞれの口座で保有する商品を個別に見て最適化するのではなく、「夫のiDeCoでこのファンド」「妻のNISAでこのファンド」「夫婦共有の特定口座でこのETF」といったように、夫婦全体のポートフォリオとしてリスクとリターンがバランスされているかを確認します。資産管理アプリなどを活用し、夫婦それぞれの口座状況を一元的に「見える化」することが、全体最適化には非常に有効です。

ステップ4:リアルな事例に学ぶ:40代後半共働き夫婦のセルフ年金計画例(架空)

ここで、40代後半の教育関連サービス管理職の共働き夫婦(Aさん夫婦)のセルフ年金計画の架空事例をご紹介します。

Aさん夫婦は、まず夫婦それぞれのねんきんネットで公的年金見込み額を確認しました。その結果、公的年金だけでは目標とする老後生活費を賄えないと判断し、不足分である約6,000万円をセルフ年金で準備することにしました。退職までの期間は約17年です。

【Aさん夫婦のセルフ年金積立計画】

これにより、17年間で約6,222万円を積立(元本合計)できます。これに加えて、現在の資産3,000万円を運用しつつ、積立分も年率4%で運用できたと仮定すると、目標額である6,000万円を大きく超える資産形成が見込めます。

【Aさん夫婦のポートフォリオ構築】

夫婦全体でリスクを分散するため、以下のようなポートフォリオ構成を目指しました。

夫のiDeCo、妻のiDeCo、夫婦それぞれのNISA口座、そして特定口座で保有する商品を合算して、このポートフォリオ比率を維持するように調整しています。例えば、夫のiDeCoで全世界株式インデックスファンドを積み立て、妻のiDeCoで先進国債券インデックスファンドを積み立てるといったように、口座ごとに役割分担を明確にすることで、管理の手間を減らしています。

この事例はあくまで一例であり、各家庭の状況によって最適な計画は異なります。重要なのは、夫婦で目標を共有し、現実的な積立額とリスク許容度に基づいたポートフォリオを構築することです。

ステップ5:定期的な見直しと夫婦間のコミュニケーション

セルフ年金構築は長期にわたる取り組みです。市場環境の変化や、夫婦のキャリアパス、収入の変化、子のライフイベント(独立、結婚など)といったライフイベントに応じて、積立計画やポートフォリオを見直す必要があります。

少なくとも年に一度は、夫婦で資産状況、積立状況、ポートフォリオの状況を確認し、必要に応じてリバランスや積立額の調整を行います。特に、退職時期が近づくにつれて、リスク資産の比率を下げるなど、より保守的な運用へシフトすることを検討します。

この定期的な見直しの機会は、夫婦がお互いの資産状況や投資に対する考え方を再確認し、認識のずれを修正するための貴重な機会となります。資産管理アプリなどを活用して、いつでも夫婦で最新の資産状況を共有できる体制を整えておくことも有効です。

結論:共働き夫婦で取り組むセルフ年金構築の重要性

共働き夫婦にとって、セルフ年金構築は、将来の経済的な安心を確保するための重要な戦略です。公的年金の見込み額を把握し、具体的な目標を設定することから始め、夫婦の収入状況や税制優遇制度を最大限に活用した積立計画を策定します。そして、夫婦合算での全体最適なポートフォリオを構築し、定期的な見直しを通じて計画を実行していくことが求められます。

セルフ年金構築のプロセスを通じて、夫婦が共通の目標に向かって協力し、コミュニケーションを深めることは、資産形成という経済的な側面だけでなく、夫婦の将来に対する安心感や幸福度を高めることにも繋がります。本稿で提示した計画立案のステップや事例が、読者である共働き夫婦の皆様がご自身のセルフ年金構築に取り組む一助となれば幸いです。まずは、夫婦で将来の老後資金について話し合う機会を持つことから始めてみてはいかがでしょうか。